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とうぶのまちあるき・東武沿線散歩 Vol.1 つきのわ~滑川町~を「知る」

2002年、東武東上線つきのわ駅の開業以来、
駅を中心に住宅開発が進み、新しい街が形づくられています。 人口増加は全国の町村で第3位(*)。
都心から約1時間という利便性もさることながら、
多くの人を魅了してやまないのは、
丘陵地ならではの他には見られない自然環境や
悠久の時に育まれてきた豊かな土地柄にあるのではないでしょうか。
そのつきのわ駅が位置する埼玉県比企郡(ひきぐん)滑川町(なめがわまち)の魅力を
「知る」「遊ぶ」「住む」の観点から3回にわたって特集いたします。

*総務省統計局 2005年国勢調査 平成12年~17年の人口増加の高い町村


取材協力/滑川町役場・滑川町教育委員会
取材・文・写真・構成/長谷部ナオキ

Report-1 滑川町(なめがわまち)の概要と自然環境

森林の自然が残るなだらかな丘陵地。

滑川町(なめがわまち)は埼玉県のほぼ真ん中、首都60km圏に位置しています。町の約60%がなだらかな丘陵地になっているそうで、緑の木々や草花が随所に見られました。
町の北東部には週末に多くの家族連れで賑わう「国営武蔵丘陵森林公園」があり、その西側は「谷津(やつ)の里」を中心とする農業地帯が、さらに西端には360度パノラマが絶景の町の最高地点「二ノ宮山」を囲む「伊古(いこ)の里」が広がっています。

200個のため池が点在する日本の「原風景」。

街のほぼ中央をゆったりと流れているのは町名にもなっている「滑川」。町役場の裏手の河原は、滑川に映える桜が見事な名所となっているそうです。
南部にも荒川水系である「市野川(いちのかわ)」が注いでいますが、古くから農耕の盛んだった丘陵地帯では、川の水だけでは田畑に十分な水を引き込むことが困難でした。そのため、かんがい用のため池が随所に作られていったといいます。
現在でも農耕などで使われているため池や沼の数は、実に200個あまり。それが、他所にはない滑川独特の景観を生み出しています。
至る所で見られる水辺の景色は、古から続く日本の「原風景」を思い起こさせ、人と自然が共存する豊かな環境を育んでいます。

Report-1 滑川町(なめがわまち)の文化と歴史

日本でも有数の遺跡分布地帯。

森林公園の南側に位置する羽根尾地域から月輪地域にかけては、数多くの遺跡が出土している日本でも有数の遺跡分布地帯。調査によると、未発掘の埋蔵文化財が、町のほぼ全域に分布しているそうです。つきのわ駅を中心とする区画整理(*)では、平成7年~19年までの12年に及ぶ調査が行われ、そのときに11遺跡が発掘されました。駅北部にある月輪古墳群(つきのわこふんぐん)・月輪遺跡(つきのわいせき)からは、古墳時代の土器や石斧、直刀、さまざまな形の埴輪が数多く出土。東上線以南の地区からは縄文時代早期の土器が見つかり、駅西南部の一帯では旧石器時代の石器も発見されているそうです。*「滑川町(なめがわまち)月輪地区土地区画整理事業」の報告書より

旧石器時代から連なるゆったりとした暮らしがありました。

町内には由緒ある神社仏閣や文化遺産も数多く残っています。国の重要文化財をはじめ、県や町で指定されている史跡、彫刻、絵画、書跡、歴史的資料などが現存し、先人の記してきた歴史が垣間見られます。 数万年以上前からゆったりと受け継がれてきた自然と文化、人々の営みが随所に感じられる滑川町(なめがわまち)。古から連なる豊かな時間と暮らしが、ひしひしと伝わってきました。
つきのわ~滑川町(なめがわまち)~自然と歴史に触れる

古墳の公園、古に続く道。

秋駅から北にまっすぐ1km程の場所。住宅地の一角に1000m²ほどの公園がありました。一見なんの変哲もない芝敷の広場ですが、よく見ると緩やかに2つの山が盛り上がっています。「なるほど、古墳だ!」と思える風情です。


古墳公園から関越道を超えた場所に位置するのが月輪古墳群。でも…。地図には載っていますが、どこがそこなのかわかりません。地元の方に伺ったところ「ここらはみんな古墳みたいなもんだから」「草が刈って盛り上がってるとこがそうだけど、見てもわからんと思うよ」とのこと…。進んでみると、それらしき場所はあったのですが、結局わからずじまいでした。ただ、周辺には丘陵地ならではの雑木林が手つかずで残っていて、「古の小路」のような場所がいくつもあります。この道を古墳時代の人も歩いたんでしょうか…。感慨深いものがありました。

「月輪」由来の神社と狛卯に会う。

関白藤原忠通の子で九条家の粗である九条兼実(くじょうかねざね)は、京都の月輪寺(がつりんじ・つきのわでら)に隠棲していたことから「月輪殿(つきわでん)」と呼ばれていました。その霊が合祀されていると言われているのが月輪神社。「月輪」の地名もここに由来しているとのこと。参道や境内には樹齢何百年?と思えるくらいの立派な杉が植わっていて、静寂かつ厳かなたたずまいです。


月輪神社の道路を挟んで向かい側に位置する福正寺(ふくしょうじ)は、月輪大納言九条兼実の安泰を祈願して奉祀されたと言われるお寺。至勢菩薩(しせいぼさつ)を本尊とする至勢堂は、菩薩さまにお仕えする卯をあしらい、狛犬ならぬ狛卯が鎮座ましましています!。このため、月輪地域の人々は、古くから卯を大切にしてきたとのこと。ちなみに狛卯たちは左右でちゃんと「阿」「吽」の口になっているのが、なんともかわいらしいかったです。
お賽銭箱にも卯の絵柄が用いられていて、とてもユニークです。思わず多めにお賽銭を入れてしまいました(笑)

市野川(いちのかわ)とつきのわの田園風景。

福正寺(ふくしょうじ)から五厘沼窯跡(ごりんぬまかまあと)へ向かう途中に横切った市野川(いちのかわ)。すぐ脇にハルム保育園があり、毎日土手を散歩しする園児たちの姿が見られるそうです。市野川(いちのかわ)は下流で大きな蛇行をしていて、釧路湿原のような自然の蛇行を景観として残す試みが街ぐるみで行っているとのこと。川辺には水をたたえた田んぼがあり、高層建築物に遮られることのない空が広がっていました。

水辺の史跡と枇杷の果実。

月輪地域から羽尾(はねお)地域に向かう緩やかな丘陵を昇ると、少し大きめの湖が顔をのぞかせます。背後の林が湖面に映る優雅な風情でたたずんでいるのが五厘沼。魚がはね、アメンボが水面をなぞっていました。


五厘沼を望むようにその前面に建っているのが五厘沼窯跡(ごりんぬまかまあと)。傾斜地を巧みに利用した登り窯で、6~7世紀初頭に使われた須恵器と呼ばれる焼き物を作っていたとされています。下部の焚火による還元熱で上部の温度は何と1150℃にも達したそうです。古代の人々の知恵に驚嘆です。窯舎の前には枇杷の木が植えられていて、おいしそうなオレンジの実が成っていました。


釣り人、日常のひとコマ。

五厘沼窯跡から北部へ向かう途中、ため池で釣りに興じる人を発見。のんびりと釣り糸をたれていた。釣れる魚はほとんどがフナだそうだか、町内にはこのような場所が至る所にあるらしい。なんとものどか。池の脇にはいまが盛りのあじさいが咲いていた。

荘厳な観音堂。霊験あらたかな仏様。

福田馬頭観音堂(ふくだばとうかんのんどう)は、いまから1231年前の778年に、当地を訪れた白髪の老僧が百日祈願を行い、その願いを馬頭明王が聞き入れてくれたお礼に馬頭観音を安置したと言われる由緒ある観音堂。なかなか荘厳です。建物を囲む木々や境内の道は手入れが行き届き、深緑に映える歴史的な建物の風情がとてもナイスな印象でした。


観音堂に隣接する成安寺(じょうあんじ)は、戦時中に学童疎開を受け入れた名勝のお寺。緑の木々に囲まれた厳かなたたずまいです。正門をくぐると、赤い帽子をかぶった6体の仏様に迎えられ、その奥には優雅に座される「なでぼとけ」なる仏様が…。御頭をを撫でれば霊験あらたか。きっといいことが起こるはず…!?

とれたて野菜と山菜100円也!

成安寺から谷津(やつ)の里へ入っていくと、梅林の入り口に農産物直売所を発見。農家のおばちゃんが集って、最近はじめたばかりとのこと。地元で穫れた野菜や山菜を販売していますが、値段がとんでもないことになっていました!


タマネギや人参、ジャガイモなどがどれも一袋100円!つる草もふきも100円!露地物のニラは一束50円!旬の真竹も50cm前後のものが3~5本でやはり100円!という驚きの価格!!梅林の梅は1.5kgで300円が「自分でもいだら200円だよ」。食が豊かな農村地域の様子が伺えました。


池のほとりのラベンダー畑。

野菜の販売所から150mほど。谷津(やつ)の里の北西部にある笠沼は、数あるため池の中でも景観が美しいと評判の場所。あいにく雨まじりの天気になってしまったのですが、くの字に折れた沼のかたちや周りを囲む緑に、美観の片鱗が伺えました。


沼のほとりにはラベンダー畑が広がっていて、ちょうど花が咲き始めたころ。間もなく一面が紫に彩られる気配を感じます。花が盛りの季節には、ラベンダー祭りが催されていますが、今年ですでに6年目。ラベンダーの摘み取りや地元の農産物の直売などがおこなわれ、町の内外からやってきた多くの人でにぎわうそうです。


水辺と緑のゆったりとして景色。色鮮やかな草花。新鮮で安価な農産物。歴史と文化。今回の散策では、そんな滑川の土地柄に、たくさんの人たちが吸い寄せられる魅力が伺えました。

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